よく、「シマノは変速がいい」「○○は変速が悪い」などと一言で言ったりしますが
体感できるだけの性能差がある以上、何かが決定的に違うはずなんです。
今日はその何かについて。
フロント変速、特にチェーンリングについての話です。
チェーンリングの変速性能について重要なのは、位相・道・ピン(と勝手に命名)の3つです。
実はもっとあるんですが、この3つについてシマノと自称シマノコンパチブルのチェーンリングを
それぞれ精査すると歴然とした違いがあるので この3つについて書きます。
位相について
シマノのクランクは5アームなので、クランクに対してチェーンリングを固定できる位置が5ヶ所あります。
しかし、これはどこに留めてもいいというわけではなく ただ1ヶ所に位置を指定しています。
(現行のデュラエースやアルテグラならアウターギヤは間違えようがないデザインですが)

アウターギヤの場合、チェーン落ち防止ピンがクランクアーム裏になる位置に、

インナーギヤの場合、この三角の印がクランクアーム裏になる位置に取り付けるよう指定されています。
出荷時はもちろんこうなっているのですが、これを知らない人が適当にチェーンリングを交換した場合、
インナーギヤの位置が間違っていることがよくあります。
なぜギヤの固定位置を指定しているのかというと、変速性能に差が出るからです。
アウター50T、インナー34Tの場合、アウターは円を50分割、インナーは円を34分割しています。

↑フリーハンドの適当な図ですが、例えばチェーンリングをクランクに固定したときに
アウターとインナーの歯先の中心が 偶然にもクランク軸中心からの延長線上の位置関係にあったとします(①の線)。
そこからひとつ隣のインナーの歯の中心から同様の線(②の線)をひくと、この線はアウターの歯先の中心を通りません。
何が言いたいかというと、アウターギヤとインナーギヤの位相の関係は一定ではなく、ずれているということです。
そしてある定まった位置関係(例えばアウターが50Tで インナーが34Tで ある定まった位相)であれば、
インナーからアウターに変速するときにチェーンの通る道も定まってきます。
道について
そこで、アウターギヤの裏側を加工して変速時にチェーンが上がりやすいようにしてあげれば、
という発想が出てきたんですね。

↑これは5750 105で変速した瞬間。

↑このときのチェーンの通り道を裏から見るとこんな感じ。

↑こういう道の加工がされています。
ピンについて
アウターとインナーの位相が決まっていればチェーンの通り道も決まる、というなら
より かかりの良くなるように変速ピンを設けてやろう、という発想が出てきました。
変速ピンの設定位置と形状がちゃんとしていれば、変速の初動作がピンの位置で起こるようになります。
(というのは見かけ上のことで、順序が逆ですね。
変速の初動作がよく起こる位置に道とピンを配しているということです)
位相と道とピンの話は以上です。

↑5750のアウターギヤには、4つのピンが打たれています。
右クランクアームを真下に向けた状態で 時計回りにピンに名前を付けていきます。

それぞれA、B、C、Dとします。5アームとピンの位置関係は 上の図の通りです。

ダウンチューブ下のシフトインナーをゆっくりと引いていきつつ、

クランクを回します。こうすれば、いつかはチェーンがアウターにかかるはずです。

↑ピンにかかって上がるときもあれば、

↑ピン以外の場所で上がることもあります。
そこで、「ピンにかかって上がる回数/アウターへの変速回数」をピンかかり率と呼ぶことにします。
これが低いようであれば ピンが仕事をしていない・ピンは飾り・変速性能が悪い ということになります。
ダウンチューブ下のインナーを引く量は漸次 定量的に大きく、クランクの回転は一定速で淀みなく、
を心がけました。恣意的な調べ方はしないように気をつけたつもりです。
このバイクについている5750のクランクの場合、ピンかかり率は90%くらいといったところでしょうか。
それを調べていて気付いたことがあるのですが、
ピンにかかった場合に、さらにどのピンにかかっていたかを調べると 圧倒的にCとDが多いんです。
CないしDで上がる確率は80%くらい、残りはほとんどAです。Bではほとんど上がりません。
なぜでしょうか。

↑アウターギヤの裏を見ると、CとDの下の道が、AとBの下の道よりも大きく加工されているんですね。
これのせいだと思われます。

CとDの道は2段削り、

AとBの道は1段削りになっています。
というより、AとBの位置はちょうどチェーンリングの肉抜き窓にかかっているので、
加工したくてもできない位置ということもあるのかもしれません。

CとDは左クランクを上から踏み下ろすときにピンかかりする位置、
AとBは右クランクを上から踏み下ろすときにピンかかりする位置なんですが

左クランクを踏み込んだときにハンガーがたわむ方向は、チェーンリングがフレームに近づく側です。
いま この実験は手回しなのでほぼ無負荷ですが、実際に乗車したときのストレスも勘案すると
右を上から踏み込むときよりも 左を上から踏み込むときのほうが変速しやすい条件のようです。

↑出荷時の状態

↑アウター・インナーともに位相を時計回りに1つ ずらしてみました。
ピンかかり率に(少なくとも無負荷回転では)影響は無いはずですが、
変速に最適なクランク入力角では無くなったはずです。
ギヤの位置指定には このこともあると思います。
速い変速、遅い変速という体感差はどこからくるのでしょうか?
これは「変速したあと チェーンがアウターギヤに落ち着くコマ数」が大きく関係しています。
チェーンがアウターギヤに定着する最速の条件は、
「ピンの向かって1つ左の歯の裏にインナーリンクが通り(1の位置)、かつ
ピンの向かって4つ左の歯にアウターリンクが奥まで入る」です。

↑写真なら この状態

↑図なら この状態
5750のクランクセットの場合、いずれのピンでも一応この条件に当てはまります。
(厳密には位相の関係で「4つ隣への落ちやすさ」の優劣がかなりあります)

ピン以外の場所で上がった場合、チェーンの初落ち着きポイントが4つ隣どころではありません。
チェーンが「カチャン」と落ち着くまでに時間がかかる(クランクの動作量がより多く必要)ほど
変速がもたつくと感じます。

もっと拡大してみると1の位置で
歯がインナーリンクのどこにかかっているかも重要です。

ピンの位置で個体差がありますね(歯先と、左側のアウターリンクとの距離が違います)。
これはチェーンの話なのですが、

↑シマノのチェーンではない(アウターリンクの端がまるい形状)場合はこうなります。
一つ前の写真はシマノのチェーン(アウターリンクの端がジャガイモ?形状)です。
それ以外の条件は同じです。チェーンのプレート形状が全く違います。
シマノのチェーンに表裏があるのはこのためです。
さらに、デュラエースのチェーンリングの変速性能がいい理由をひとつ。

↑これは例えばストロングライトのCT2チェーンリングですが、
裏側の道について、肉抜き穴の形状から来る加工上の制約があります。

↑ここはこれだけ道を作れますが、

↑ここはこういう風にしか道を作れません。
さっきの5750のアウターギヤと同じ問題です。

↑これは7900のチェーンリングです。道&ピンは5ヶ所です。

道&ピン その1 その2

その3 その4

その5
道に関して制約がほとんどありません!
特に その1&2と その3&4は同じ写真に見えるくらいの同条件っぷりです。
7800のチェーンリングも穴なしギヤですが、重量増を避けるために
裏側を可能な限り削いでいました。
しかしそれでも道作りに関して加工上の制約ができます。
7900では中空・貼り合わせ構造にすることで 変速性能を向上させつつ
軽さを犠牲にしていません。この構造では剛性アップも同時に狙えますが、
おそらくそれは副産物で、第一義はアウター裏側の加工の自由度の追求からきた
デザインなのではないでしょうか。
自称シマノコンパチブルのチェーンリングについて

これはFSAのスーパーロードというチェーンリング(PCD110mm・50T)です。
これを5750のチェーンリングと重ね合わせます。

↑位相が合いません。この時点で、平面的に考えてもシマノと同じではないことが分かります。
残り4ヶ所にそれぞれずらしても、合う位置がありません。
仮に5750のチェーンリングの位相が理想的な位置関係だとするなら、
このチェーンリングを5750の34Tと合わせると変速性能が悪くなるはずです。
FSAのスーパーロードの道加工&ピン設定がシマノよりもはるかに優れていれば
位相の違いを乗り越えてシマノ純正よりも変速性能が向上するかもしれませんが、
まず考えられないことです。

↑試しにこの状態でピンかかり率と、変速時に4つ隣で落ちるかどうかを調べれば済むことです。
実際にやると惨憺たる結果です。
シマノのPCD110mmのコンパクトクランクセットには
アウターは50T、インナーは34Tしか設定がありません。
シマノ純正50Tギヤは、シマノ純正34Tギヤから上がる道&ピンの加工について
完璧(←工業製品に使ってはいけない言葉)とも思えるマッチングを示します。
もし、シマノがPCD110mmで36Tや38Tのギヤを出すなら
36T用の50T、38T用の50Tも出す必要があります。
(34Tのときだけ変速性能が違うというわけにはいかなくなるので)
事実PCD130mmの52Tには、インナー39T用の52Tと
インナー42T用の52Tの2種類があります。
同じ52Tギヤでも、それぞれ道の加工位置とピンの位置が違います。

↑これはFSAのSL-Kライト クランクセットです。
チェーンリングもFSAです。

ピンかかり率はシマノよりも悪いですが、

一番ピンかかりのいいピンは 左踏み込みのときにおいしい位置で、

4つ隣でチェーンが落ち込むかどうか、も合格です。

道の加工、これもいいですね!
問題は、仕事をしているのが ほぼこのピンだけということです。
ピンかかりした場合の90%くらいはこのピンです。
でも、これでもまだ ましなほうです。

↑これはもっとずっと廉価なクランクセットです。
上の写真の状態ではピンかかりOKで 4つ隣にきれいに落ちています。

が、ピン以外で上がるとこうなります。

まだ はまりません。

まだまだ はまりません。

ここでやっと はまりました。
自称シマノコンパチブルのサードパーティ製クランクセットやチェーンリングを使う場合は、
ピンかかり率と もっとも変速するポイントで4つ隣に落ちるかどうか、の2つを
チェックするのがオススメです。
おまけ

さっきのストロングライトCT2はPCD130mmのものですが、上の写真は
かつてCT2のPCD110mmの50Tで変速性能を試したときのなぐり書きです。
CT2には6つのピンが打ってあります。
それぞれ先ほどの5750のアウターのようにA~Fまで番号を振ります。
じつはこのチェーンリング、ピンかかり率ほぼ100%(インナーギヤの条件付けは必要)なんです。
その上で どのピンにかかるかですが、「正」の字の一画は10回ごとに書き足されます。
ピンかかりNo.1はE、次いでBですが、
Eは左踏み込み、Bは右踏み込みのときに
ピンかかりする位置です。
Dのピンを丸で囲って欄外に線を引いていますが、その先に
「6つのピンの中で、Dが最も4つ隣にすんなり落ちない位相」というメモがあります。
でもDはピンかかり率No.3なんですね。不思議です。Aは飾りのようなものです。
このCT2は アウター裏の道を2次加工しているのですが、加工後に調べているので
ピンかかりがEとBに集中するのは そのせいもあると思います。
位相ちがうというメモで比較されているのは5750のアウターです。

表題にフロント編とありますが、リヤ編はありません。
体感できるだけの性能差がある以上、何かが決定的に違うはずなんです。
今日はその何かについて。
フロント変速、特にチェーンリングについての話です。
チェーンリングの変速性能について重要なのは、位相・道・ピン(と勝手に命名)の3つです。
実はもっとあるんですが、この3つについてシマノと自称シマノコンパチブルのチェーンリングを
それぞれ精査すると歴然とした違いがあるので この3つについて書きます。
位相について
シマノのクランクは5アームなので、クランクに対してチェーンリングを固定できる位置が5ヶ所あります。
しかし、これはどこに留めてもいいというわけではなく ただ1ヶ所に位置を指定しています。
(現行のデュラエースやアルテグラならアウターギヤは間違えようがないデザインですが)

アウターギヤの場合、チェーン落ち防止ピンがクランクアーム裏になる位置に、

インナーギヤの場合、この三角の印がクランクアーム裏になる位置に取り付けるよう指定されています。
出荷時はもちろんこうなっているのですが、これを知らない人が適当にチェーンリングを交換した場合、
インナーギヤの位置が間違っていることがよくあります。
なぜギヤの固定位置を指定しているのかというと、変速性能に差が出るからです。
アウター50T、インナー34Tの場合、アウターは円を50分割、インナーは円を34分割しています。

↑フリーハンドの適当な図ですが、例えばチェーンリングをクランクに固定したときに
アウターとインナーの歯先の中心が 偶然にもクランク軸中心からの延長線上の位置関係にあったとします(①の線)。
そこからひとつ隣のインナーの歯の中心から同様の線(②の線)をひくと、この線はアウターの歯先の中心を通りません。
何が言いたいかというと、アウターギヤとインナーギヤの位相の関係は一定ではなく、ずれているということです。
そしてある定まった位置関係(例えばアウターが50Tで インナーが34Tで ある定まった位相)であれば、
インナーからアウターに変速するときにチェーンの通る道も定まってきます。
道について
そこで、アウターギヤの裏側を加工して変速時にチェーンが上がりやすいようにしてあげれば、
という発想が出てきたんですね。

↑これは5750 105で変速した瞬間。

↑このときのチェーンの通り道を裏から見るとこんな感じ。

↑こういう道の加工がされています。
ピンについて
アウターとインナーの位相が決まっていればチェーンの通り道も決まる、というなら
より かかりの良くなるように変速ピンを設けてやろう、という発想が出てきました。
変速ピンの設定位置と形状がちゃんとしていれば、変速の初動作がピンの位置で起こるようになります。
(というのは見かけ上のことで、順序が逆ですね。
変速の初動作がよく起こる位置に道とピンを配しているということです)
位相と道とピンの話は以上です。

↑5750のアウターギヤには、4つのピンが打たれています。
右クランクアームを真下に向けた状態で 時計回りにピンに名前を付けていきます。

それぞれA、B、C、Dとします。5アームとピンの位置関係は 上の図の通りです。

ダウンチューブ下のシフトインナーをゆっくりと引いていきつつ、

クランクを回します。こうすれば、いつかはチェーンがアウターにかかるはずです。

↑ピンにかかって上がるときもあれば、

↑ピン以外の場所で上がることもあります。
そこで、「ピンにかかって上がる回数/アウターへの変速回数」をピンかかり率と呼ぶことにします。
これが低いようであれば ピンが仕事をしていない・ピンは飾り・変速性能が悪い ということになります。
ダウンチューブ下のインナーを引く量は漸次 定量的に大きく、クランクの回転は一定速で淀みなく、
を心がけました。恣意的な調べ方はしないように気をつけたつもりです。
このバイクについている5750のクランクの場合、ピンかかり率は90%くらいといったところでしょうか。
それを調べていて気付いたことがあるのですが、
ピンにかかった場合に、さらにどのピンにかかっていたかを調べると 圧倒的にCとDが多いんです。
CないしDで上がる確率は80%くらい、残りはほとんどAです。Bではほとんど上がりません。
なぜでしょうか。

↑アウターギヤの裏を見ると、CとDの下の道が、AとBの下の道よりも大きく加工されているんですね。
これのせいだと思われます。

CとDの道は2段削り、

AとBの道は1段削りになっています。
というより、AとBの位置はちょうどチェーンリングの肉抜き窓にかかっているので、
加工したくてもできない位置ということもあるのかもしれません。

CとDは左クランクを上から踏み下ろすときにピンかかりする位置、
AとBは右クランクを上から踏み下ろすときにピンかかりする位置なんですが

左クランクを踏み込んだときにハンガーがたわむ方向は、チェーンリングがフレームに近づく側です。
いま この実験は手回しなのでほぼ無負荷ですが、実際に乗車したときのストレスも勘案すると
右を上から踏み込むときよりも 左を上から踏み込むときのほうが変速しやすい条件のようです。

↑出荷時の状態

↑アウター・インナーともに位相を時計回りに1つ ずらしてみました。
ピンかかり率に(少なくとも無負荷回転では)影響は無いはずですが、
変速に最適なクランク入力角では無くなったはずです。
ギヤの位置指定には このこともあると思います。
速い変速、遅い変速という体感差はどこからくるのでしょうか?
これは「変速したあと チェーンがアウターギヤに落ち着くコマ数」が大きく関係しています。
チェーンがアウターギヤに定着する最速の条件は、
「ピンの向かって1つ左の歯の裏にインナーリンクが通り(1の位置)、かつ
ピンの向かって4つ左の歯にアウターリンクが奥まで入る」です。

↑写真なら この状態

↑図なら この状態
5750のクランクセットの場合、いずれのピンでも一応この条件に当てはまります。
(厳密には位相の関係で「4つ隣への落ちやすさ」の優劣がかなりあります)

ピン以外の場所で上がった場合、チェーンの初落ち着きポイントが4つ隣どころではありません。
チェーンが「カチャン」と落ち着くまでに時間がかかる(クランクの動作量がより多く必要)ほど
変速がもたつくと感じます。

もっと拡大してみると1の位置で
歯がインナーリンクのどこにかかっているかも重要です。

ピンの位置で個体差がありますね(歯先と、左側のアウターリンクとの距離が違います)。
これはチェーンの話なのですが、

↑シマノのチェーンではない(アウターリンクの端がまるい形状)場合はこうなります。
一つ前の写真はシマノのチェーン(アウターリンクの端がジャガイモ?形状)です。
それ以外の条件は同じです。チェーンのプレート形状が全く違います。
シマノのチェーンに表裏があるのはこのためです。
さらに、デュラエースのチェーンリングの変速性能がいい理由をひとつ。

↑これは例えばストロングライトのCT2チェーンリングですが、
裏側の道について、肉抜き穴の形状から来る加工上の制約があります。

↑ここはこれだけ道を作れますが、

↑ここはこういう風にしか道を作れません。
さっきの5750のアウターギヤと同じ問題です。

↑これは7900のチェーンリングです。道&ピンは5ヶ所です。

道&ピン その1 その2

その3 その4

その5
道に関して制約がほとんどありません!
特に その1&2と その3&4は同じ写真に見えるくらいの同条件っぷりです。
7800のチェーンリングも穴なしギヤですが、重量増を避けるために
裏側を可能な限り削いでいました。
しかしそれでも道作りに関して加工上の制約ができます。
7900では中空・貼り合わせ構造にすることで 変速性能を向上させつつ
軽さを犠牲にしていません。この構造では剛性アップも同時に狙えますが、
おそらくそれは副産物で、第一義はアウター裏側の加工の自由度の追求からきた
デザインなのではないでしょうか。
自称シマノコンパチブルのチェーンリングについて

これはFSAのスーパーロードというチェーンリング(PCD110mm・50T)です。
これを5750のチェーンリングと重ね合わせます。

↑位相が合いません。この時点で、平面的に考えてもシマノと同じではないことが分かります。
残り4ヶ所にそれぞれずらしても、合う位置がありません。
仮に5750のチェーンリングの位相が理想的な位置関係だとするなら、
このチェーンリングを5750の34Tと合わせると変速性能が悪くなるはずです。
FSAのスーパーロードの道加工&ピン設定がシマノよりもはるかに優れていれば
位相の違いを乗り越えてシマノ純正よりも変速性能が向上するかもしれませんが、
まず考えられないことです。

↑試しにこの状態でピンかかり率と、変速時に4つ隣で落ちるかどうかを調べれば済むことです。
実際にやると惨憺たる結果です。
シマノのPCD110mmのコンパクトクランクセットには
アウターは50T、インナーは34Tしか設定がありません。
シマノ純正50Tギヤは、シマノ純正34Tギヤから上がる道&ピンの加工について
完璧(←工業製品に使ってはいけない言葉)とも思えるマッチングを示します。
もし、シマノがPCD110mmで36Tや38Tのギヤを出すなら
36T用の50T、38T用の50Tも出す必要があります。
(34Tのときだけ変速性能が違うというわけにはいかなくなるので)
事実PCD130mmの52Tには、インナー39T用の52Tと
インナー42T用の52Tの2種類があります。
同じ52Tギヤでも、それぞれ道の加工位置とピンの位置が違います。

↑これはFSAのSL-Kライト クランクセットです。
チェーンリングもFSAです。

ピンかかり率はシマノよりも悪いですが、

一番ピンかかりのいいピンは 左踏み込みのときにおいしい位置で、

4つ隣でチェーンが落ち込むかどうか、も合格です。

道の加工、これもいいですね!
問題は、仕事をしているのが ほぼこのピンだけということです。
ピンかかりした場合の90%くらいはこのピンです。
でも、これでもまだ ましなほうです。

↑これはもっとずっと廉価なクランクセットです。
上の写真の状態ではピンかかりOKで 4つ隣にきれいに落ちています。

が、ピン以外で上がるとこうなります。

まだ はまりません。

まだまだ はまりません。

ここでやっと はまりました。
自称シマノコンパチブルのサードパーティ製クランクセットやチェーンリングを使う場合は、
ピンかかり率と もっとも変速するポイントで4つ隣に落ちるかどうか、の2つを
チェックするのがオススメです。
おまけ

さっきのストロングライトCT2はPCD130mmのものですが、上の写真は
かつてCT2のPCD110mmの50Tで変速性能を試したときのなぐり書きです。
CT2には6つのピンが打ってあります。
それぞれ先ほどの5750のアウターのようにA~Fまで番号を振ります。
じつはこのチェーンリング、ピンかかり率ほぼ100%(インナーギヤの条件付けは必要)なんです。
その上で どのピンにかかるかですが、「正」の字の一画は10回ごとに書き足されます。
ピンかかりNo.1はE、次いでBですが、
Eは左踏み込み、Bは右踏み込みのときに
ピンかかりする位置です。
Dのピンを丸で囲って欄外に線を引いていますが、その先に
「6つのピンの中で、Dが最も4つ隣にすんなり落ちない位相」というメモがあります。
でもDはピンかかり率No.3なんですね。不思議です。Aは飾りのようなものです。
このCT2は アウター裏の道を2次加工しているのですが、加工後に調べているので
ピンかかりがEとBに集中するのは そのせいもあると思います。
位相ちがうというメモで比較されているのは5750のアウターです。

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